* 研究紹介 *



研究材料

・ショウジョウバエと寄生蜂について

 ショウジョウバエは昆虫の中でも、適応放散により大きなグループとして存在するばかりでなく、遺伝学的にもよく研究された生物です。本研究室では、いろいろな種類のショウジョウバエを用いて、主に進化遺伝学的研究をおこなっています。また、ショウジョウバエの寄生蜂は、ハエの幼虫や蛹に寄生する小さなハチで、ハエの蛹から羽化してきます。日本では、今までほとんど研究されていませんが、寄生蜂の生態遺伝学的な研究と分子系統学的な研究もおこなっています。

研究内容

・核とミトコンドリアDNAによるショウジョウバエの分子系統の研究

 ショウジョウバエは、多くの種が記載されていますが、分類学的な識別が困難な種や系統関係があきらかになっていないグループなどが多く、分子系統学的にも興味深い動物です。本研究室では、進化速度が速いと考えられているミトコンドリアDNAやITS(rRNAの非翻訳領域)DNAを用いてショウジョウバエの近縁種を、その他の遺伝子を用いて類縁の遠いグループの系統関係を研究しています。

・P因子の分布と分子進化に関する研究

 キイロショウジョウバエで発見されたP因子というトランスポゾンは、その近縁種には発見されず、他のグループに存在するという進化的に興味深いトランスポゾンです。本研究室では日本および東南アジア産のショウジョウバエを中心に、P因子の分布と進化を研究しています。P因子の分布の調査は、現在は飼育が困難な原始的なショウジョウバエにまで及び、ショウジョウバエのP因子にはホリゾンタルトランスファー(Horizontal transfer)という現象が多くあることが分かりました。

・寄生蜂の生態遺伝学的研究と分子系統学的研究

 ショウジョウバエの寄生蜂の一種、 Asobara japonica は、雌ばかり産む系統と、雌雄を産む系統があります。この種を用いて、宿主であるショウジョウバエに対する寄生性に関する研究、ハチの共生菌であるボルバキアに関する研究、及び日本で採集される寄生蜂の分子系統学的研究もおこなっています。

・ ショウジョウバエの種分化に関する研究

 トラフショウジョウバエ種亜群は、分類学的に識別が困難な種が多く、種分化や進化遺伝学的な面から興味深い種亜群です。我々はこの種亜群のいくつかの種を用いて、交尾行動や雑種形成などを研究し、種分化のメカニズムを明らかにしようとしています。