研究内容

細胞成長と細胞壁代謝

 植物の成長はオーキシンやジベレリンなどの植物ホルモンで調節されています。個々の植物細胞の成長には細胞外からの水吸収と細胞壁伸展が必要です。細胞壁が伸展するにはその主成分である多糖類の加水分解や生合成(再合成)反応が重要です。これらの反応機構を解明するために、細胞壁酵素タンパク質の種類やはたらき、細胞壁前駆物質である糖やヌクレオチドの代謝を調べています。

重金属耐性とフィトケラチン

 地中から水養分を吸収する陸上植物は同時に多量の有害物質を吸収する危険に晒されています。これは食物連鎖を介して他生物にも深刻な事態をもたらす二次汚染の原因にもなっています。植物は多量の重金属を集積する能力をもち、これが、植物以外ではあまり見られないフィトケラチン(PC)という重金属結合物質の合成とどう関連しているかを調べています。実験材料はいろいろな植物の芽生えや培養細胞など様々です。また、重金属以外の有用金属の吸収・輸送・利用と比較研究も重要な研究テーマとなっています。

酸化ストレスにおけるグルタチオンとアスコルビン酸の役割

 重金属や塩害、高温・低温、乾燥などの様々な環境要因は、各自の独特な影響とは別に植物体に酸化ストレスを与えることが知られている。つまり植物は、直接的な影響と同時に二次的に生じた活性酸素への対応を余儀なくされます。植物の主要な水溶性の抗酸化物質として知られるグルタチオンとアスコルビン酸の量的変化とそれらの機能について種々の環境ストレス条件で調べています。

栄養ストレスや重力ストレス

 植物は同化器官(主に葉)の光合成によって様々な有機物をつくり他器官の成長や形態形成、エネルギー代謝を支えています。しかし、環境条件が悪化し、有機物の合成や輸送が抑制されると多くの部位の組織が栄養不足に陥ります。この飢餓的条件で植物が生き残る機構を調べています。また、植物の基礎的代謝に対する重力の影響を遠心分離器や1Dクリスタットを用いて調べています。

複合環境ストレスに対する遺伝子発現調節

 植物は生育中に乾燥や高温、低温などさまざまな環境の変化にさらされ、これに耐えています。実際には、高温と乾燥が同時におこるなど複数の環境変化が同時に植物に影響を与えます。このような場合に、植物がどのようにして遺伝子発現を適正に調節しているのか、その仕組を調べています。

ダンチクのストレス耐性

 ダンチクは大型の海浜植物で優れた環境ストレス耐性を持っています。ダンチクが塩ストレスなどに耐える仕組みを明らかにするために、ストレス耐性の向上に寄与している遺伝子の単離を行なっています。


学術論文

2013

2012

2011

2010

2009


学位論文

2013年度

卒業論文

  • 塩生植物アイスプラントのライフサイクルにおける塩の役割について
  • イネ科大型海浜植物ダンチクの遺伝子解析
  • シロイヌナズナのヒートショックタンパク質Hsp17.4遺伝子の発現制御に関する研究
  • トマトのストレス応答性転写因子SlDREB2と相互作用する因子の検索
  • 葉緑体タンパク質遺伝子COR15aの低温誘導性発現抑制における転写抑制因子ABI4の機能

2012年度

修士論文

  • シロイヌナズナのヒートショックタンパク質HSP17.4遺伝子の発現解析
      ー高温ストレスと水結合ストレスの相乗効果ー

卒業論文

  • トマト(Micro-Tom 品種)の成長とカリウム蓄積に対するセシウムの影響
  • シロイヌナズナの低温応答に対するアスコルビン酸とグルタチオンの影響
  • アイスプラントの塩類集積性と地上部成長に対する異種金属陽イオンの影響
  • イネ科の大型海浜植物ダンチクの塩ストレス耐性に関する研究
  • シロイヌナズナの葉緑体タンパク質遺伝子COR15aの発現に対する低温と光の影響
  • 乾燥・高温ストレスにおけるシロイヌナズナRD29A遺伝子のプロモーター解析
  • リプレッションドメインを利用した出芽酵母two-hybrid解析系の新規構築
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