理工学研究科は、その分野における高度な専門知識及び応用能力を獲得した高度専門職業人(知・技術のプロフェッショナル)・研究者となる理工系人材を育成し、継続的に輩出することで、学術・産業・社会の発展に貢献する役割を担っています。その中でも自然科学基盤プログラム生物学分野では生物の機能と進化および生物と地球環境の相互関係を総合的に探究する学修と研究活動の成果により、現代の技術を支え、未来の知を拓く人材を継続的に輩出し、学術・産業・社会の発展に貢献することを目標としています。
入学試験など理工学研究科全体に共通する事柄については研究科ホームページをご覧ください。
<博士前期課程>
博士前期(修士)課程では主体的に研究・開発活動を実施できるレベルの高度な専門知識・技能・倫理観を有し、高度専門職業人、技術者、研究者として自律的に発展することができる能力の習得を目指します。専攻共通科目では理工系人材が共通に必要とする基盤能力として科学技術と社会の関わりを踏まえて価値観・立場が異なる人々に適切に伝える力を身につけます。プログラム共通科目では講義科目のほか、セミナーでのプレゼンテーション・ディスカッションを通じて、視野の広い分野横断力とトランスファラブルスキルを涵養します。そして専門科目、修士特別研究、学位論文作成の過程で研究・開発活動の基盤となる高度な専門能力と学識を身につけます。
専攻共通科目 | プログラム共通科目 | 専門科目(生物学) |
研究倫理特論 科学・技術英語 アカデミックプレゼンテーション 修士特別研究1 修士特別研究2 | 化学物質管理の基礎知識 実験・フィールドワークの安全衛生 データサイエンス概論 SDGs概論 知的財産権特論 高等セミナーA 高等セミナーB 高等セミナーC 高等セミナーD 国際学術セミナー 学外特別研修1 学外特別研修2 インターンシップ | 植物細胞機能構造学 植物機能生理学 発生機構学 進化形態学 分子機能生物学 水域生態学 進化生態学 環境分子毒性学 環境微生物学 水圏生物環境学 生物情報学 生物学課題実験A 生物学課題実験B |
<博士後期課程>
博士後期課程では科学・技術を切り拓く先導的な研究・開発活動を実施できるレベルの高度な専門能力と幅広い総合力に基づく学識を有し、自立した研究者・技術者として、広く社会や環境の諸問題に科学・技術の側面から関わり、貢献することができる能力の習得を目指します。専攻共通科目としてEU SPRING 事業(1)準拠のプログラムで研究者としての基盤スキル、アカデミックキャリアを身につけ、専門科目の博士特別研究で学生個々の実践的なリサーチワークと学位論文作成の指導を通じて、高度な課題探求力・解決力、高度な専門能力・学識を身につけます。
(1) 愛媛大学次世代研究者挑戦的プログラム:優れた博士後期課程学生に対し、自由で挑戦的な研究に専念するための経済的支援と、キャリア開発・育成コンテンツといった教育的支援等を行う事業。詳細はこちら。
専攻共通科目 | 専門科目 |
ファンダメンタル・アカデミックスキル アドバンスド・アカデミックスキル キャリアパス・ディベロップメント リサーチ・インターンシップ 学外高等特別演習 学外高等特別研修 国際交流研究 | 博士特別研究 |
植物細胞機能構造学
真核生物の細胞は、細胞自身や細胞内小器官(葉緑体など)の運動のためや、細胞構造の補強のために「細胞骨格」と呼ばれる繊維状のタンパク質を備えています。本科目では細胞骨格の働きの面から植物細胞の機能を研究することによって,細胞生物学及び植物細胞生理学に関わる高度な知識と洞察力を育みます。
植物機能生理学
動物とは異なり、植物の細胞はセルロースを主成分とする硬い細胞壁に取り囲まれています。また植物はテルペノイドやアルカロイドといった様々な機能を持った二次代謝産物を合成し、変動する環境や病害虫に対応しています。本科目では、植物の細胞壁、二次代謝産物と生物間相互作用、非生物的ストレス等について、植物科学分野の研究進展を踏まえながら,分かりやすく伝える力を培います。
進化形態学
後口動物と前口動物という全く異なる系譜に起源する、「脊椎動物」および「昆虫類」は、それぞれ独自の進化過程の末に、地球上で繁栄してきた。本授業では、これら二群がそれぞれどのような形態変化を経ることで現在の姿に至ったのか、最新の研究の紹介をまじえつつ、形態学的な観点から開設する。授業の前半では、最新の神経科学の知見をもとに、ヒトの中枢神経系の構造および機能について理解するとともに、様々な動物の神経系について、その形態、回路形成、進化過程を体系的に理解する。授業の後半では、昆虫の進化において鍵となった形質について、その形態と発生その仕組みを学びながら、昆虫の進化過程について理解する。
発生機構学
複雑な形と機能を備えた多細胞生物もその発生はたった1つの細胞(受精卵)から始まります。本科目では生物の体がいかにして形成されるか、またその過程ではたらく様々な仕組みが、どのようなアプローチや概念をもとに解明されてきたかを知るとともに、発生生物学分野に関して、何が問題として残され、今後どのような進展が期待されているのか理解します。
分子機能生物学
遺伝子発現は生命現象の基本であり、適切な時期や環境で、適切な遺伝子を、適切な量発現することで生命は存在しています。分子生物学においては膨大に蓄積された核酸やタンパク質の配列情報、ゲノム情報、遺伝子発現情報等のデータの中から有用な情報を見つけ出すことが重要です。インターネット上には上記の情報だけでなく、多数の情報解析ツールも公開されています。本科目で遺伝子発現調節の中心を担う転写因子を題材に細胞内で起こっている分子レベルのイベントを学ぶとともに、分子生物学に必要なインターネットリソースの使い方を身につけます。
水域生態学
河川は陸域から海へと向かう水と土砂の通路であり、それらの一方向的な流れとその変動性によって維持される特色あるシステムです。そこに棲む生物相も含めたこのシステム、すなわち河川生態系が、どのような概念によって捉えられるのか、生物群集の構造と機能および場のつながりと変動性を切り口に理解していきます。また、人間が暮らしのためにこのシステムにどのように干渉してきたかを知り、人為的影響も含んだ現状の自然を見る目を養います。
進化生態学
生物の仕組みはDNA配列という形式の情報プログラムにより決められており、それぞれの種や個体は固有のDNA配列をもっています。本科目では主に生態学の分野で、DNA情報を生物の進化や生態系の構造を理解するためどのように活用できるかを学びます。私たちが自然を理解して生物多様性を守り持続可能な開発目標に向かうために、野外における自然観察に加え、生物がもつDNA情報を合わせ用いて生態系への理解を深めます。
環境分子毒性学
本講義では、環境汚染物質が生物に及ぼす毒性作用の分子メカニズムについて学びます。特に、化学物質の曝露が生物の遺伝子発現、タンパク質機能、細胞応答にどのように影響するかを理解します。また、in vitro実験、in silico解析、オミクス解析などの最新技術を用いた研究事例を紹介し、環境毒性学の最前線に触れることができます。また、野生動物や実験動物を用いた従来の毒性試験の限界と、動物実験に頼らない新しい毒性試験法の開発についても議論します。
水圏生物環境学
生態学の分野では確率的変動などのノイズが多い野外データを扱います。本科目では複雑な野外データから特定のパターンを抽出することで、水棲生物の個体群や生活史の環境応答性を理解する手法について学びます。また保全生物学的な視点を持ってデータ分析を行うことにより、現在その多くが存続の危機にさらされている水棲生物の個体群を健全に維持していく方法について考えます。
生物情報学
生物学においても観測・実験データの集積や、実験スループットの向上に伴って大規模データを取り扱う場面が多くなっています。本科目では細菌叢および環境DNAから得られた16S rRNAや18S rRNA等のシーケンス情報を材料に、データフレームの操作や可視化といった生物情報の解析法を学びます。また生物多様性の指標等の環境に関する公開情報を活用することで、課題を発見および解決する能力を養います。