畑 啓生 教授
hata.hiroki.mk(at)ehime-u.ac.jp
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私たちはこの地球上でどうやって多種多様な生物とともに暮らしていくのか?今を生きる私たちには、生物多様性に満ちたこの地球、この国、この島を、しっかりと自分たちの目で観察して、先人から受け継ぎ次の世代へ引き渡す責務があります。
生物たちは互いにどのような種間関係のネットワークで結ばれているのか?どのように支え合って、競い合って、利用しあって、様々な生物が共存できているのか?地元松山や愛媛県の河川や海から、沖縄のサンゴ礁、世界の海、アフリカの湖まで、様々なフィールドで共に考えていきましょう。
「写真」ブラジル、アマゾン川でピラニアを釣り、ウオノエを探す。
愛媛県では、美しい淡水魚のヤリタナゴが絶滅の危機にあります。国内外来種のアブラボテとの競争や、交雑による遺伝子汚染が起こっているからです。また、これらのタナゴ類は、淡水二枚貝の鰓の中に卵を産むという驚くような生態を持ちますが、その二枚貝のマツカサガイやイシガイも激減しているからです。これらの淡水生物は、ヒトが住む以前から平野部に生息していましたが、現在では平野は隅々まで農地や宅地などとして開拓されているため、小川や農業用の水路が主な生息場所です。しかし、農業生産の効率化のみを目的とした圃場整備がこの最後の生息地を壊してきました。わたしたちは、世界で求められている自然共生社会を目指し、引き継いできた生物多様性を、豊かなまま次の世代に引き継げるよう、研究を続けています。
「写真」愛媛県の愛媛県の絶滅危惧種マツカサガイとヤリタナゴ
ウオノエは魚類に絶対寄生する生物で、宿主となる魚がいなければ生きていけません。私たちは世界中の水域からウオノエを採集し、遺伝子のDNA配列を解読して、進化の道筋を再現して、その進化史を紐解いています。
それにより、ウオノエ類の祖先はもともと自由生活をしていましたが、魚に寄生して一生を過ごせるようになり、たくさんの種類へと多様化したことが分かりました。
また、深海の、魚類のなかでも古い系統であるウナギ目の魚の鰓蓋腔に寄生するようになったのがおそらく始まりで、そこから魚類の進化とともに、宿主となる魚種を乗り換えながら、浅い海や淡水域へと進出してきたことが分かってきました。
マツカサガイの鰓に卵を産んで、殻に守られながら孵化して稚魚まで過ごす。
ヤリタナゴの産卵に必須なので、マツカサガイの絶滅はヤリタナゴの連鎖的絶滅を引き起こす。
研究室の標語はStay hungry, stay foolish.